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- サフィレット?サフィリーン?
魅惑的な青と煉瓦色、紫がかったりピンクだったりするこっくりとした不思議な存在感があるサフィレット。
瑞々しさと爽やかな水色を持ち合わせた凛とした佇まいのサフィリーン。
どちらもとても大好きな素材です。
古い古いガラスのお話をします。
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お話を進めるにあたって、まず大前提としてご理解を頂きたい3点。
【確固たる情報が少ない素材であること】
【サフィレットとサフィリーンは別の性質をもつことから別物であること】
【今わかっているとされる情報が変わるかもしれないこと】
どちらのガラスもその製法は既に失われており、現代において再現することができません。
作り方や成分、なぜ現代にその製法に関するノウハウが継承されなかったのでしょうか?
それは先祖代々、門外不出として製造していた家系が途絶えたから…なんてロマンチックな説もあるサフィレット。
製法や成分はおおよその憶測はできても、確固たる証拠足り得る文献や資料が見つかっていないのが現状です。
(サフィレットとサフィリーンの性質(産地や年代)の違いについては下に記述します)
時の経過によって明るみに出る情報が増えるので、これからお話しする内容は明日には覆っているかもしれません。
そんなミステリアスな存在であることを心に留めていただいた方から、魅惑的なそのガラスの世界へとご案内します。
『サフィレット』と『サフィリーン』
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”サフィレット(Saphiret)はチェコのヤブロネッツ地方で1900年代初頭までに作られた変色ガラスの名称。
ラベンダーがかった淡いピンク色をしており、角度によってブルーやグリーン、茶色のシラーを放つ。
製法が不明なため現在は製造されておらず原料に砒素や金が用いられているという説もある。
ヴォックスオール、ヴォクソールなどとも呼ばれる。
ヴィンテージサフィレットと称されるサフィリーンとは別物である。”
(出典:ウィキペディア(Wikipedia):フリー百科事典、「サフィレット」)
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少し興味を持ったことがある方はまずこの文章を目にするのではないでしょうか。私もそうでした。
今日本国内で、(特にインターネットSNSなどで)『サフィリーン』と『サフィレット』という名称について話題が挙がります。
今回はここからお話ししていきます。
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現在、サフィレットはアンティーク、サフィリーンはヴィンテージとして区別されていることが多いです。

《サフィリーン…1950年頃〜1960年頃までにサフィレットを再現しようとドイツにて製造(※1)》
100年以上経過したものを”アンティーク”、30〜99年経過したものを”ヴィンテージ”と位置づけることが一般的(※2)ですが、
サフィレットもサフィリーンもかつてはあまり明確にその名称を用いての区別はされていませんでした。
アンティークサフィレット。。。ヴィンテージサフィレット。。。といったように分けられていたそうです。
ただしヴィンテージはいずれアンティークになります。
ヴィンテージサフィレット(サフィリーン)の歴史がアンティークに差し掛かった時、
素材の性質が異なる二つを区別することが難しくなるので異なる名称で呼ぶ傾向が強くなっています。
(これはあくまでも日本国内でのお話。もちろん海外の方でも名称で区別してる方はいますが、
サフィレット、サフィリーン以外の名称もあるので、ここはとりあえずは国内の話だと認識してください。)
。。。余談ですが、実はアンティークだと思われるサフィレットのパッケージやメモ・書付に、極めてサフィリーンに似た綴りで記載されていた、なんて話も聞いたことがあります。これは国内でアンティークショップを営んでいらっしゃるご主人に伺ったお話です。
本題に戻りましょう。
。。。知れば知るほど現在使っている名称は本当に正しいのか?という疑問が湧きますが、確固たる証拠がないので断言できません。
しかし文章で説明する際、より明確に情報を提供するには曖昧なままでは不便が生じるため、苑-en-では
チェコ製アンティークを「サフィレット」
ドイツ製ヴィンテージを「サフィリーン」
と呼ぶことにしています。
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今後様々な詳細が明らかになるにつれ、名称や説明には変更が生じる可能性があることをご理解ください。
私はその可能性が捨てきれない限り、確証がない情報や一説について説明する際は、”あえて”言葉尻を曖昧にしています。
「〜という可能性がある」「一説では〜」「〜かもしれない」といったように。
これからサフィレットを知ろうとしている方々に、勘違いや思い込みを誘導するような行為は私の本意ではないからです。

《イギリスから。植物をモチーフにしたヴィクトリアン時代のブローチ。
この時代は植物をモチーフにしたジュエリーが多く作られます。茎の部分が平らなプレート状では無く山になっていて、その切り口に当たる部分もしっかりと表現されているところはさすがのこだわりを感じます。
細やかな爪で留められたクッションカットのサフィレットが青を散らす繊細な雰囲気です。》
販売する側と購入する側
ただし《販売する側》にいるものとして、販売時点や制作段階で知りえている個体の情報は正しく伝える責務があると考えています。
誠意を持って対応していくことが、サフィレット/サフィリーンを販売する上で必要不可欠だという認識です。

《バックフォイルがあるサフィリーン。
表面がつるんとしていたりカットが施されていたりと多様だが、その雰囲気はどことなく似ています。
デットストックとしてまとまった数が市場に出回っています。みずみずしく儚げな雰囲気。》
ところが残念なことに、ドイツ製ではないかと思われるサフィリーンを”チェコ製のアンティーク”と偽って、
もしくは紛らわしい表記をした上で販売している方がいないわけではありません。
作為的な場合は如何なものか。。。と思うわけですが、
数十年このガラスに魅了されてきた方々(活動範囲がアンティークショーなどへの出展メインな方々が多いように感じます)は、
産地と年代だけで区別している方も多いです。
よって「サフィレットなのか?サフィリーンなのか?」と質問しても納得のいく返答がもらえない場合があります。
また、総じて”サフィレット”と呼んでいらっしゃる場合も往々にしてあります。
もし《販売する側》が”サフィリーン”という名称にピンときていなさそうだと感じた時、
年代や産地を聞くことで判断できる知識を、《購入する側》が持ち合わせていたら、
誤解や勘違いが減るのではないかと思います。
サフィレットもサフィリーンも現代では作ることができない、《ロストテクノロジー》の遺産です。
それぞれの良さや性質を知識として身につけることにより、よりその魅力に集中して没頭できるのではないでしょうか。
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《購入者》の立場に立った時、アンティークの世界はどの分野においても無知が損をする世界だと考えています。
厳しい表現ですが、《販売側》は親切な方ばかりでも誠実な方ばかりではありません。
《販売側》に正しい情報記載を期待することは当然ですが、損をしないためには《購入側》の知識も不可欠だと考えます。
興味からスタートし、理解を深め、知識を培うことにより、結果的に自衛の力を高めることになるのかなと思います。
そして《販売者側》は、このガラスにはコアなファンが存在し、
現在2つのガラスが繊細な関係になっていることを理解しなくてはなりません。
慎重になりすぎる必要はありませんが、情報は正確に丁寧に。
これに尽きると思います。
かく言う私も、サフィレットについての紛らわしい説明をサフィリーンのページに添えられ、
アンティークだと思ってヴィンテージを購入した経験が何度かあります。
本当にがっかりしますよね。。。
ちゃんとサフィリーンだと分かったうえで購入したかったです。。。
その時ショップ側に何も言いませんでしたが、
自らあれこれ調べ始めて見分けをつけられる目を養おうと決めました。
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どちらのガラスも決して安くはありません。
ぜひサフィレットやサフィリーンで残念な思いをする方が1人でも減ることを、
その魅力に共感してくださる方が1人でも増えることを願って長々とお話しさせてもらいました。

《いつもお伺いするディーラーさんから入手したクロスのペンダントトップ。
まるでこのクロスを作りたいが為にしつらえたようなカットで、小ぶりながら目を惹きます。
同じデザインを他のディーラーさんも取り扱っているのを見かけたので、当時人気があったのでしょうか。
爪や枠の意匠が素晴らしく、見えない部分にまでこだわる職人の心意気を感じます。》
「いいな」と感じ、このガラスを取り巻く状況を理解した上で「購入したい」と思ったら、
誠意をもったショップさんを探してみてください。
きっとその店主さんはサフィレット/サフィリーンが大好きだと思います!
そして不信感が拭えない物は、買わない勇気も時に必要かな?と思います。
今回はここまで。
また新しい情報がわかりましたら、必要に応じて追記として書き足していきたいと思います。
このガラスが大好きな一個人として、
《購入者側》でもあり《販売者側》でもある苑-en-の あるえ がお話しさせていただきました。
拙い文章でしたが、最後までまで読んでくださってありがとうございました!!
素敵なアクセサリーに出会えますように。
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※1…ドイツ以外でも製造されていたという説もあります。
※2…経過年数ではなく、アール・デコ時代などの区切りでアンティークとヴィンテージを判断する方もいます。また第2次世界大戦を境にしている方も。100年以上という定義はアメリカの関税法が関係しています。
☆☆☆☆☆【2018.05.28 追記】☆☆☆☆☆

こちらも茎の先端に切り口が表現されています。
個人的には爪の数がもっと多く枠にも意匠があれば申し分なかったのですが、シンプルな作りだからこそ現代の日常使いに最適なのかもしれません。
チェーンには「14ctrg」とメーカーズマークの「K&L」の刻印がありますが、当時のオリジナルかどうかは不明です。》
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(きっと他にもあるんでしょうね♪製造はどんなものでも興味深いです。)

色の違いはさることながら、アンティークの方は縁の部分が経年によりまろやかになっています。
後からカットされた物と思われる物はカット面が鋭利です。
個人的な感触ではありますが、"後からカット"やサフィリーンはガラス自体に靱性が無いといいますか、
石留めをしているとパキッと軽く欠けてしまう危うさが感触から伝わってきます。
アンティークのルースは総じて弾力(というか粘り強さというか…)を感じるため
(実際に柔らかいわけではありません。個人的に石留めしている際に感じるごくわずかな感触の違いです)石留めがしやすいです。
…といってもよく欠いてしまうのですが…涙。
さてその違いの理由は何でしょう。
成分が関係しているのではないかと考えています。鉛グラス(クリスタルガラス)で身近なのはスワロフスキーでしょうか。
通常の鉛ガラスよりも鉛の含有量が多いスワロフスキーよりも靱性を感じるサフィレット。答えはいつでも遙か昔にあるようです。》
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いつか資料として実物を見てみたいと思いつつ、なかなか良いタイミングで出逢えません。
そのアンティークの時代に作られたサフィレット棒が、後になってカットされているものがあるそうです。
一応素材としてはアンティークの時代から存在していたものとして、
簡易的な呼び名は《アンティーク》、ただし商品説明の中に解説を入れる
ということで落ち着きました。今回の更新から、該当するサフィレットに関して説明を追記しています。
気になる作品がある方は説明文の※を確認してください。
紫寄りの色をしているものもあります。
(私の主観ですが。。。^^;)
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「見せてください」とお願いすると快く出してくださる方がほとんどですよ^^